クリニックのSNS対策はどこまで必要か

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スマホサイトは必須です

検索エンジンの表示順位はスマホサイトをベースに決められるようになっています。社会の検索行動がスマホベースになり、モバイルフレンドリー(スマホでの表示が読みやすい)なWEBサイトが必須です。

新たにPCサイトを作成する際は「レスポンシブ」といわれるスマホサイトも作成しなくてはなりません。レスポンシブサイトとは端末のモニターの大きさ・ブラウザの表示画面の大きさによって自動的に表示の大きさを変えて読みやすく表示するものです。

PC表示
池袋めぐクリニックPC
スマホ表示
池袋めぐクリニックSP

どこまでのレスポンシブが必要か

一口に端末モニタの大きさといっても、かなりの数がございます。

スマホ iPhone・アンドロイドスマホの縦表示、横表示
タブレット iPad・アンドロイドタブレットの縦表示、横表示
PC 1024px~2560px(2021年現在では1024の横幅が多くのサイトで採用されています)

画像を自動的に拡大縮小すると、表示はされますが荒れたり滲んで見づらい画像になります。そのためそれぞれのモニタに最適なサイズの画像を事前に用意してなくてはなりません。極論ではありますが、端末縦横5種類に合わせるとするとWEBサイト内に100枚の画像があれば、レスポンシブ用に500枚の画像を用意しなくてはならずその分工数が増え費用がかさみます。(実際には自動的に調節して滲みの許容範囲もありますのでそこまでは必要ありません)

ファーロでは医療サイトはすべての端末に完全に対応する必要はないと考え、スマホとPCのみに最適化しております。患者様がどんな端末で見ているかは立地と診療科目でかなりばらつきがありますが、おおよそざっくりと当社では以下のようになっています。

スマホ閲覧 65%~85%
PC閲覧 10%~30%
タブレット閲覧 5%弱

このタブレットでの閲覧者はほぼ医療関係者とみられますので、当社ではタブレット端末での閲覧はPCサイトの縮小版で対応可能と考えており、その分工数を減らして制作管理費用を安くご提供しております。

医療サイトとSNSの相性

大前提として、医療サイトとSNSは相性がよくないと考えております。
SNSは基本的に「自分の情報・意見を不特定多数の人と共有し承認を得る」ために使われることが多いメディアと考えられますが、多くの人にとって医療機関の受診は「特別に他人に開示したい情報ではない」からです。そのため飲食業態のように「より多くの情報発信」を考えることは無用な炎上、トラブルリスクが増えますので、当社お客様には発信は必要ないのではと・・・ご助言申し上げております。

しかし時代の変化とともに検索行動も変わりつつあり、検索全体の中では少数ですが、グーグルを経由せずTwitterやインスタグラム、LINEで、医療機関を探す人も増えてはきております。今はまだ少数ですが、今後どのように社会が変化していくかわかりませんので、10年先に患者様になりえる人々のことを考えて各SNSのアカウントは作成していただき最低限の医療機関情報の掲載はしておいた方がよいと考えています。

医療サイトでのSNS種別の利用方法

LINE LINE

不特定多数の人とつながるのではなく、クリニックを受診済みの患者様にだけダイレクトメールを送ることができます。「LINE公式アカウント」を取得していただき、アカウントは「来院者のみ友だち登録できる」ようにすれば受診済みの患者様にだけ、テキスト、画像、動画、ボイスメッセージなどを送ることができるようになります。従来紙ベースで「健診のおすすめ」類の通知にかかっていた郵券経費は必要なくなります。「LINE公式」は申請、審査を経てひと月ほどでアカウントは取得可能です。小児科でのママさんたちへの予防接種の情報提供や、糖尿病など各種の患者会などへの連絡や通知等、いわゆる既存患者様の囲い込みマーケティングにご利用可能かと思われます。

Twitter twitter

「急ぎのお知らせ」としてご利用いただけます。ファーロの場合でも更新依頼から24時間以内の更新実績は84%です。「午後は台風で診療中止」「コロナワクチンの入荷が止まった」「月曜日は**先生休診」などの時もリアルタイムで患者様へ情報を発信可能になります。WEBサイト内にTwitterを表示できるようにして連動すれば、お知らせ欄更新のためにCMS(自主更新システム)を導入する必要がなくなり、いつでもクリニックサイドから最低限のおしらせ情報の提供が可能になります。

事例 : 丸の内クリニック様

Twitterは影響力が大きく匿名が可能なので、取り扱いが非常に難しいメディアだと思います。思いがけない一言が炎上やトラブルに発展することもございますので、クリニックからの公式なお知らせ以外にご利用されることは今のところ当社ではお勧めしておりません。

インスタグラムinstagram

今のところクリニックに特別必要なSNSではないかもしれませんが、テキストで説明しきれない視覚の方がわかりやすい情報提供はインスタグラムが適しているかもしれません。新規開業案件などでの綺麗なクリニック外観、内観、説明しづらい駐車場、季節ごとの庭の花や木々、公的機関や医薬品会社からのお知らせポスターなどの写真を掲載することは可能だと思います。原稿文言を考えずともスマホのカメラで撮影してすぐ掲載できる手軽さも魅力の一つではあります。いづれにしても今すぐ実需に直結するマーケティングツールとしてではなく、いつかインスタグラムからの検索対策が必要になる可能性があるかもしれない程度の感覚で公式のアカウントを一つご用意して導線の確保だけしておけばよろしいのではないかと考えております。

Facebook facebook

実名メディアということもあり日本では利用者が限定されてきているため当社ではあまり必要性は感じておりません。しかし東南アジアの一部地域ではSNS=Facebookと考えて問題ないほど浸透しております。そのためPET検診や特殊な診療で海外からの需要をお考えの際(いわゆる医療ツーリズム需要の取り込み)はFacebookのページをお考えになられてもよいかもしれません。

医療サイトでのSNS利用法をまとめると

LINE 既存患者様へのダイレクトメール専用導線
Twitter 急ぎのお知らせ(基本的には画像情報は載せない)
インスタグラム 画像情報のみで将来への布石
Facebook 海外からの医療ツーリズム需要喚起

とファーロでは考えており、一つのSNSですべてを賄おうとされず、それぞれの特性に合わせて必要に応じて使い分けをされることを先生方にはお勧めしております。

SNSマーケティングとは

医療サイトは医療法広告規制や薬機法の下での表現が義務付けられています。新聞、TV、雑誌、等の既存メディアでの医療の広告は法律、業界基準、各社校閲の目を通って出稿されます。ネット広告でもグーグルやヤフーのような大手プラットフォームのリスティング広告(ターゲティング広告含む)は医療法と薬機法にのっとって掲載基準が定められています。SNSでも各プラットフォームが提供する広告の掲載場所に関しては随時ルールが整備されてきております。しかしSNSの中はどんどん利用のされ方が広がり、人が集まることで新しい宣伝手法が生み出される場所にもなっています。

マーケティング

インフルエンサーマーケティング

様々な手段がございますが、一例として2010年代から始まった広告手段の一つにインフルエンサーマーケティングというものがございます。インフルエンサーとは影響力を持つ人という意味で、ファロワーの多いユーチューバーやインスタグラマー、ブロガーのことです。彼ら彼女らに広告費を払って宣伝してもらう仕組みです。大変雑駁に図表にすると以下のようになりますが、数字はわかりやすさ優先で事実とは異なります。また、多重下請け構造になっておりますので、インフルエンサーに仕事が届くまでに2重3重に仲介業者が入ります。

メディア 部数・
フォロワー数
広告場所 広告制作費 掲載費用 単価 効果 検証
旧来の雑誌 5万部 カラーグラビア1P 10万円~ 30万円 8円/部
インフルエンサー数人 フォロワー数合計5万人 インスタやTwitter 0円~ 25万円 5円/フォロワー

クライアントとインフルエンサーの間に入る広告代理店やマーケティング会社は再生回数、いいね数、など各インフルエンサーに数値目標(KPI設定)を設定し成果報酬にすることもございます。インフルエンサーは数値目標達成のために、よりインパクトのある、面白く、大勢が見てくれるような写真や動画などを工夫して表現します。同じ5万人へのリーチであっても誰が購入したか検証できない雑誌と、どのような属性を持った人が見たか検証できるSNS、グラビアを見てくれた人がどのくらいいるかわからない雑誌と、再生回数や「いいね」で反応がはっきりするSNS、企業が同じ費用をかけるならどちらの方に広告するか優勝劣敗ははっきりしているかと思います。SNSマーケティングは費用対効果が高く、飲食、雑貨、アパレル、化粧品など小中規模で従来広告に大きな費用をかけられなかった事業者でも(BtoC)直接消費者に訴えることが可能になってきております。

SNSマーケティングの問題点

問題は「誰がどこまでその表現内容に責任を持つのか」・・・です。クライアント、仲介の広告代理店、広告運用事業者、インフルエンサー所属事務所、インフルエンサー個々人・・・良心的な業者様は自主的に基準をお持ちですが明確な全体のルールはまだ整備されていないようです。

SNSのプラットフォーム企業は「広告の場所」での表現についてはルールを決めていますが、各利用者(インフルエンサー)の投稿内容に対しては「場の提供だけ」という立場で、公序良俗に反する表現以外には表現の自由との兼ね合いで規制方法に苦慮しているようです。

問題点

検索エンジンのリスティング広告と同様に参入障壁が低く、個人でも一定のノウハウを持てば明日からでもSNSでの広告代理店事業・メディアレップ事業を起こせます。そのため巷間、「マーケティング」、「集客」、「売り上げアップ」などの文言が様々なメディアに跋扈するようになっていると思われます。この仕組みは構造上ステルスマーケティング(広告に見えないが実は広告)になりかねないという問題も内包し続けています。「これは広告です」という明示を省けばその瞬間にステルスマーケティングになってしまうからです。また業者様の中には、ごく一部ではあると思いますが、インフルエンサーマーケティングの拡大解釈の一環として、やらせの口コミマーケティングを行うこともあると耳にします。また、「やらせ」ではございませんが、悪い口コミだけ見せないようにするシステムなども出てきています。今現在「アウト」ではないようですがグーグルのユーザーファーストの姿勢はすさまじいものがございます。ユーザーの利便性を損なうと判断されればそれらの仕組みはネット市場から退場を余儀なくされるかもしれません。デジタルのマーケティングサービスは出現も淘汰も大変速いスピードでサイクルしております。

クリニックのSNS戦略をまとめると

これからはSEOではなくSMO(ソーシャルメディア最適化)だと喧伝されることもございます。医療機関(特に自由診療を行っている場合)は、中小規模の地域密着型優良BtoC企業として、これらのSNSマーケティングを得意とする業者様の次なる大きな市場とみられるようになっており、クリニックご開業と同時に様々な営業が入るようになってきました。

検索行動が変わる将来のための布石として各SNS導線を確保することは大切ではあると思いますが、ファーロのご助言方針は「先陣を切らない」です。グーグルのルールはすぐに変わります。都市部ビル診で固定費がかさむ診療科の場合、何とか機器稼働率を上げたい、少しでも集患をしたいというお気持ちは理解できますが、ファーロでは今のところSNSマーケティングまでお考えにならなくてもよいのでは・・・とお伝えしています。広告手法への社会認知が進み、一般化され、ルールが整備され、業者の淘汰も進んだ時点からお考えになっても保険診療中心の医療機関であれば十分間に合うのではないかと考えています。