制作費無料の危険性

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制作費無料・格安の理由

人が動く以上必ず費用は発生しており「無料」または「格安」には何らかの理由があります。CMS(自主制作自主更新サイト)サービスの業者に登録して数百円などの廉価で自作する場合と、業者に任せての格安があります。共通しているのは薄利多売で、数千種類以上といわれるテンプレートによる制作が多いことです。

  • WEBサイト自体が別の大きな買い物の「おまけ」である場合

    大学病院や総合病院など億単位の大掛かりなITシステムを導入する際に、ホームページは「おまけ」として大手ITゼネコンが下請け業者などに作らせていた場合がありました。現在ではCTなど高額な医療機器導入のおまけとして提供される場合があるようです。

  • コーディングをオフショア外注したり、制作全体を単価の安い副業ランサーに外注する場合

    かつては人件費の安かったアジア各地にコーディングだけ外注したり、現在は国内の副業フリーランサーを利用する際、質を担保せず単価の安い人だけを集めて格安で制作するケースがあります。

  • 独自のCMSを無料で配布している場合(業者が市販の無料サービスを2次利用するケースも)

    テンプレートのカスタマイズできる部分が一部だけであったり、ページ数に上限を設けることもあるようです。またSEO対策上必須であるtitleタグやdescriptionタグの設定が自由にできないように制限されていることもございます。多くの場合電話やメールでの問い合わせ対応をしていないためご自身で調べて解決する必要があります。費用を節約するために海外の無料サーバーを利用されている場合は日本語でのサービスを受けられないこともあります。

  • 制作費を業者が負担する代わりに、別の利益率の高いサービスを勧誘したい場合

    継続課金型、従量課金型のWEBサービスの導入(各種のシステム)または広告出稿をしてもらうための見込み客リスト(マーケティング用語でいうリード)として活用するための営業ツールとしてのWEBサイト制作です。

主にこれら4パターンの組合わせで数多くのテンプレートを利用して提供されるケースが無料や格安といわれるものになります。特徴としてはWEBサイトがクリニックの目的達成の道具ではなく、業者側の目的の道具として制作・販売されるということだと思われます。そのためいずれも個々のクリニックの「内容」までは深く勘案されにくいようです。

無料・格安制作費の危険性

無料・格安制作費の危険性

最も気を付けたいのは別のサービスへの誘導導線としてホームページ本体が格安になっている時かもしれません。広告出稿や何らかの従量課金システムでの増患集患はドーピングのようなものです。
これらのケースではある程度デザインの見栄えが良く、データ上は使った広告費以上の売り上げが出ます。制作費も管理費も安上がりに見えます。しかしホームページ本来の「内容」の力での集患ではないため、サイト内で貴クリニックの魅力とメリットを伝えきれず、当社調べでは再診につながりにくい傾向が出ています。 そのため「1回だけ受診」の患者様を広告で集め続けることになり、広告費を削るとそのまま売り上げが減少してしまうという相談を幾度も受けてまいりました。

ある調査によるとリスティングで上位に表示されている広告表示のあるサイトは「クリックしない」という人の割合が増えています。また2020年のニールセンデジタル調査では口コミへの信頼性も低下しています。社会へのデジタル化浸透は同時に利用者リテラシーも高めることになり、広告とマーケティングの在り様を絶えず変え続けています。広告ベースで考えるということはデジタルマーケティングの情報を経営者としてキャッチアップし続けなくてはならないということになります。

昨今はグーグルの進歩で知らぬ間に業者の別の顧客URLを埋め込まれるケースなどは少なくなってきましたが、「無料」「激安」の場合、かつては知らぬ間に他の企業の広告塔にされていることがありました。ホームページの見た目にはわからない部分に全く関係ないURLやキーワードが埋め込まれ、日本医師会会員HPガイドラインの「利益誘導型のリンク先への誘導は慎むべきである」という項目に知らずに抵触する可能性がありました。検索エンジン対策において「多くのサイトからリンクを張られているサイトは良いサイト」とロボットが判断することを悪用し、業者が自社の「有料顧客」のSEO対策上「無料顧客」を集め、そこにリンクを張っていたようです。

また登録など個人情報と引き換えに無料でホームページを作れるサービスは数多くございますが、なんらかの理由でそのサービスが終了したときは、同時にホームページを失うことになります。2019年3月末にて終了した日本での無料ホームページサービスの草分けのような存在であった「Yahoo!ジオシティーズ」はサービス終了理由について「一言では説明できません」としております。このようなケースの場合、指定された期限までにデータをダウンロードまたは転送しなければ、全て削除されることになります。

ホームページ制作とシステム構築の違い

基本料金は控えめでも、オプションで膨らんでいく「積み上げ型」制作費は、ある程度考えてから発注が必要です。先生方が漠然とでも「こんなことをしたい」と言えばその機能が必要かどうかのアドバイスではなく、実装するために必要な見積もりを行い予算はあっという間に膨らんでいきます。10年ほど前にファーロが相談を受けた最高額の他社様見積もりは3000万円を超えていました・・・

このケースは例外かもしれませんが、おそらく発注される先生が「ホームページ」と「システム」の区別がついていなかったのではないかと思われます。業者側は悪気なく依頼されたママ見積もりを作ったのだと思いますが、遠隔画像診断、予約順番呼び出し通知(SNSは普及してませんでした)、検査結果自動通知、WEB求人応募管理などのシステムが「独自システム」で見積もられていました。遠隔画像診断など当時は回線インフラも整っておらずアイデアだけの時代であり実現できるのかどうかもわかりませんでした。「これは3000万円でもできないでしょう・・・」とお伝えし、システムとホームページの違いをご説明したことを覚えております。家を作るときに、キッチンやトイレ、カーテンや電灯までオリジナルで大工さんに作ってもらうことはまず少なく、作るとしたらメーカーのものより高額になってしまうというたとえ話でご理解いただきました。

テンプレの危険性

通常のホームページ(WEBサイト)制作会社は、発注先企業様の情報システム部門等より、RFP(リクエストフォープロポーザル)という要件定義の基礎を受け取り、それを元に提案や見積もりを作成いたします。人件費がほとんどを占めますので、構築にどのくらいの人手と時間がかかるかによって見積もりが変わり、いわゆる「定価」のような費用を示せないため、料金表のようなものが制作会社のサイトに提示できないことが多いようです。医療サイトを専門にされている制作会社ではおおよそ必要な内容が限定されますのでパックとして定価を記載していることが多く、制作するべき内容を画一化してマスプロの流れ作業にすればするほど定価は低く提示できます。

また見栄えができた後に行うテストとチェック、確認はテンプレサイトであってもOSやブラウザごとに丁寧に行わねばならない本来は時間がかかる工程です。表示上は問題なくてもソースコードの目視確認の工程を相当省力化しているのだろうと見受けられるサイトも散見します。ソースコードの中に別の受注先他院名が残っているサイトをいくつも見ております。同じテンプレを使いまわす中で時間に追われて見逃したのだろうなと技術者に同情しますが、本来あってはならない事象だと思います。

制作費相場

総合的に考えるとクリニックのホームページとして最低限必要なページをそろえて約15ページ~20ページくらいで、PCサイトとスマホのレスポンシブサイトを含めて60万円位~80万円が、暴利でもなく手抜きでもない相場ではないかとファーロでは考えます。これまでの総合病院様の競合コンペでの見積もりなどを拝見する限り、HTMLフルスクラッチサイトでは50ページ~80ページめどでは300万円~400万円くらいのお見積もりが多かったように記憶しております。ディレクター、マーケター、デザイナー、ライター、コーダー、オプションで独自システムが入ればプログラマー、写真を撮ればカメラマン、これらを兼業で行うことで制作費を抑えることになりますが、当然一つ一つの業務の専門性と熟練度に欠け、ホームページを育てることは難しいかもしれません。それぞれの専門家が顧客に対しどこまで責任を持つかという各制作会社様の理念と経営方針次第かと思われます。